骨そしょう症 |宝塚市中山寺 しばたに整形外科クリニック | 整形外科 リハビリテーション科

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骨粗しょう症

骨粗しょう症について

骨粗しょう症は簡単に言うと「骨折するリスクが増大した状態」です。「骨強度」が低下することで「骨折しやすくなる」わけですが、「骨強度」は「骨密度」と「骨質」によって決まります。そして「骨強度」の7割を「骨密度」が、そして3割を「骨質」が担っていると言われています。「骨密度」は老化(若い時期(20~30歳頃)をピークに加齢と共に減少していきます)や閉経(女性ホルモンの減少)、カルシウム不足、運動不足、喫煙や過度の飲酒、などが原因となって低下します。「骨密度」が減少すると骨自体がスカスカで脆くなり、「骨強度」が低下し、骨折のリスクが高まります。

要介護を招く大腿骨近位部の骨折

骨粗しょう症を発症すると、わずかな衝撃でも骨折をきたしやすくなります。いわゆる「骨脆弱性骨折」としてあげられるものは「脊椎圧迫骨折」「大腿骨近位部骨折」「上腕骨近位端骨折」「頭骨遠位端骨折」などですが、なかでも大腿骨近位部(脚の付け根の骨)骨折は、受傷すると、体を支える機能が損なわれ、高齢者の方の場合は「要介護状態」を招く原因となります。実際寝たきりの原因の17%は骨折であると言われています。
そのような状態になる前に専門的な治療や適切な生活習慣の改善を行えば、低下した骨密度を改善し、骨折リスクを減少させることができます。

50歳になる前に女性は一度検査を

わが国では高齢化が進み、平均寿命が延びるにしたがって、女性を中心に骨粗しょう症に罹患している患者数は、年々増加の一途をたどっています。女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が低下する更年期以降、とくに多く認められます。エストロゲンには、骨の新陳代謝のうち、骨吸収を緩やかにし、骨からカルシウムが溶け出すのを抑える働きがあります。このエストロゲンは女性が閉経を迎えると分泌量が減っていきます。そうなると骨吸収のスピードが速まり、やがて骨形成が追いつかなくなり、結果として骨が脆くなってしまうのです。
多くの女性は50歳前後で閉経を迎えますので、一度50歳になる前に骨粗しょう症の検査をお受けになることをお勧めいたします。
このほかにも、偏食や極端なダイエット、喫煙や過ぎた飲酒なども骨粗しょう症の原因と目されており、最近では高齢の女性だけでなく、若い女性の骨粗しょう症も問題視されるようになっています。

骨粗しょう症の検査

骨粗しょう症の診断にあたっては、骨密度検査、骨代謝マーカーの検査、X線検査、身長測定などが行われます。当院では、DEXA法による検査を行えるよう、全身型の骨密度測定装置を導入しており、腰椎と左右いずれかの大腿骨頸部の2か所で骨密度の測定を行っています。

DEXA法による骨密度検査

骨の強さを判定する際の重要な尺度の1つが「骨密度」です。当院では、全身型の骨密度測定装置を導入し、この検査機器による骨密度の測定(DEXA法)を行っております。
なお、DEXA法(二重エネルギーX線吸収測定法)とは、高低2種類のX線を測定部位に照射して、その透過度をコンピュータで解析し、骨密度を調べる方法です。ガイドラインでは腰椎(腰の骨)、大腿骨頸部(太ももの付け根部分の骨)での測定を推奨しています。
DEXA法では骨量を単位面積で割った値で算出し、「骨密度」として表します。骨密度とは、骨の強さ(骨強度)の要素の一つで骨粗しょう症診断の基準のひとつです。20~44歳の健康な成人の骨密度を100%とした場合、検査を受けている方が現状どれほどの骨密度であるかということを算出します。このパーセンテージで表示される数値は、YAM値(Young Adult Mean:骨密度若年成人平均値)と呼ばれています。ちなみに80%未満と判定された場合は骨粗鬆症の疑いが高いと言われ、70%未満であれば投薬治療を開始しなければならないとされています。
DEXA法の利点は、短い時間で済むうえ誤差が小さく、放射線の被爆量も少ないことです。確実性と安全性に優れた検査法です。

その他の検査方法

骨代謝マーカーの検査
血液や尿によって「骨代謝マーカー」を調べることにより、骨吸収と骨形成のバランスがわかります。このバランスが崩れると、骨は弱くなります。また、骨吸収を示す骨代謝マーカーの高い人では、骨密度の低下する速度が速いため、骨密度の値にかかわらず、骨折リスクが高くなっています。
X線検査
主に背骨(胸椎や腰椎)のX線写真を撮り、骨折や変形が無いか、また「骨粗しょう化」の有無、つまり骨に鬆(す)が入ったようにスカスカになっていないかどうかを調べます。骨粗しょう症と他の疾患との鑑別に必要な検査です。
身長測定
25歳時点の身長と比べて、どのくらい縮んでいるかを調べます。25歳の頃より4cm以上低くなっている場合は、それほど低くなっていない人と比べ、骨折リスクが2倍以上高いという報告があります。

骨粗しょう症の予防と治療について

骨粗しょう症の発症には、老化や閉経以外にも食事・運動などの生活習慣も大きく関与しています。そのため「骨の生活習慣病」とも言われ、食事・運動療法もこの病気の予防と改善には欠かせません。ただし、骨粗しょう症の診断を受けた場合は、治療の中心は薬物療法となります。
生活習慣を改善する2つの方法ですが、食事療法では、骨の主成分であるカルシウムやたんぱく質、および骨のリモデリングに必要なビタミンD・Kなどの栄養素を積極的に摂り、バランスのとれた食生活を送ることに努めます。また運動療法では、必ずしも強度の高い運動が必要というわけではありません。家事や歩くだけでも骨に対する刺激になります。時間や距離を決めてウォーキングをするだけでも十分に効果があります。とにかく長く継続することが大切です。楽しんで継続できる運動を習慣づけるといいでしょう。

※リモデリング:骨を壊す働きをする破骨細胞が骨を吸収する一方で、骨をつくる働きをする骨芽細胞が、破骨細胞によって吸収された部分に新しい骨をつくる代謝作用。つまり骨の新陳代謝です。

骨粗しょう症の薬物療法

病状が進んだケースでは、食事療法や運動療法に併せて薬物療法を開始します。骨の破壊を抑制する薬や骨の材料を補う薬などが処方されます。

主な骨粗しょう症の治療薬

骨の破壊を抑制する薬
ビスフォスフォネート製剤
骨吸収を抑えることによって骨形成を促進し、骨量を増やします。特に有効性の高い治療薬として知られ、現在、骨粗しょう症治療の第一選択薬です。ビスフォスフォネートは腸で吸収され、骨へと届きます。そして破骨細胞に作用し、過剰な骨吸収を抑制するのです。すると骨形成が追いついて、骨密度が改善されていきます。
選択的エストロゲン受容体作動薬(SERM)
骨に対しては、女性ホルモンのエストロゲンに似た作用があり、骨質を改善します。
ヒト型抗RANKLモノクローナル抗体製剤(デノスマブ)
骨を壊す細胞(破骨細胞)をできにくくして、骨吸収を抑えます。すると骨量が増え、骨折リスクが減少します。特に大腿骨の骨量改善に効果があるとされています。この薬の特徴は、6ヶ月に1回の皮下注射で済む点です。
骨の材料を補う薬
カルシウム製剤
食事によるカルシウムの摂取不足、乳糖不耐症の方、胃腸の手術後などに用いられます。多くは、他剤と併用されます。
活性型ビタミンD3製剤
活性型ビタミンD3には、腸管からのカルシウムの吸収を促進して体内のカルシウム量を増やす作用があります。また、骨形成も促します。
ビタミンK製剤
ビタミンKは骨芽細胞に作用することで骨形成を促進し、同時に骨吸収を抑制することで骨代謝のバランスを整え、骨の質を改善します。
※ワーファリン(血液を固まりにくくする薬)を服用している方には使えません。
骨をつくる薬
副甲状腺ホルモン(PTH)製剤
骨形成を促進して骨量を増やし、骨折リスクを減少させる薬です。専用キットを用いて1日1回自己注射する薬と、週1回医療機関で注射する薬の2種類があります。骨密度が著しく減少しているケースなど、骨折リスクの高い患者様に用いられます。2年間の使用期間が定められており、この薬による治療期間が終了した後はほかの治療薬に変更しなければなりません。